人間の生活のあるところ 《人間・生活・服装》

人間の身につけるものは色とりどりに、さまざまの形状をもって見受けられる。

しかし、初めから現在あるような着用物が存在していたわけではなく、身につけるものとしての形体が決まっていたのでもない。

これら着用物のすべては人間がつくったもの、つまり「人間の造形行為の産物」である。まず身近なもののうちから「着るもの」にふさわしいと思われる材料を選び、「着るもの」をつくる。

そして形になったものから、ふさわしい「着るもの」を選んで、身につける。さらにまとまりある服装として整える。

このように具象物に人間の行為がかかわりあって、生活の営みのなかで、「着るもの」は、知恵とくふうによって編み出されてきたのである。

「人間の着るもの」としてつくられたこれらのものは、単独では完全な形態になることのできない特色をもっている。

それは、内側に生体を包み込み、「生体とともに動くもの」であり、また人間の手によって「生体に着脱されるもの」であるからである。

このように「人間の着るもの」は、生活する人間の身体を心棒にして生体との深いかかわりのもとに、時間的・空間的流れのなかで、多様な展開をみせてくれる。

「着るもの」を身につける主要な部位は躯幹部であり、この躯幹部を主体に、最上部の頭、左右の手先および足先から中心に向けて、手が主導的役割を果たし、他の部位がそれに追随して着ることがなされる。

脱ぐ場合にはおおむね逆の方向がとられる。

身につけられた「着るもの」はただ単に身体の外側に置かれるだけでなく、次に行われる人体の行動に対して安定した状態で保たれるように、整えられなければならない。

そのとき、人体を土台に人体と着衣とが一体となった「服装の形態」が、完成されるのである。

2本の足で立ち上がってヒトとなってからの人間の身体は、寸法的な推移はあっても、基本的な形態は変わることなく現在に及んでいるが、その身体につけられた服装の形態は、服装史や民族衣装にみられるように変化に富む。

しかしこれはすべて「人間の生体」と「衣料素材からつくられた着衣」との関係のなかで変化し、異なった形態をとっているのである。
update:2010年02月23日